2004年05月12日 (水)00:15  | さてさてやっと現れた魔竜王ガーヴ。 ここでの重要な点は『ガーヴの強さを見せ付けること』。それがまず1点です。
重要な役はOPの最後で姿を見せなくてはいけない。そんな掟があるのかどうかはわからないが、NEXTの意味ありげなOPの謎がやっと解け始めるのもここからです。(そこの人っエヴァのパクリとか言わないっ!) 今まで見続けてきたあのOPシーンがここと重なるのかっ!という感動は結構あって嬉しいんですよね。まぁ、NEXTは原作もそれなりに売れてきた頃ですから原作を知っている人は、わかる部分も多々あると思うんですが…。
さて、てっきりラスボスかと見せかけているガーヴですが、原作ではいともアッサリくたばっています。たった1巻。それが魔竜王の存在です。なんだか身も蓋もないような言い方をしていますが、原作は別に『ガーヴは強い』などと言うのをアピールしなくても、魔竜王の配下であるラルタークに苦戦したり、リナの心情を操作することで、簡単に強さが伝わってくるからいいんです。それに、原作の一連の流れを読者は知っていますからね。 しかし、アニメはそうもいきません。無印から半年、間にギャグ月間(この間は夏休みな為テレビを見ない人も出てくるのです)。どうしても強さを見せたいなら時間と、回数を重ねなくてはいけません。また、アニメでは竜将軍・竜神官が出てこないので、いきなり5腹心だー!とか言われてもピンと来ないですしね。
てなわけで、起こるのが…『ガーヴにボロ負けすること』なんですよね。無茶苦茶強い敵ほど、主人公がやられちゃったり、一時撤退しなくちゃいけなかったり、近くの住民やそこそこの戦士を痛めつけたりしなくてはいけません。それは王道ですが、人間の基本的心理です。 しかし、その王道を踏み外すことなく歩いているガーヴはやっぱり強い。論理的に説明するのではなく、もう子供の心に直感的に恐怖を植えつける感じですね。そんなガーヴの初開戦がこの回です。 ちなみにこの後、クレア・バイブルにて2回目、その外で3回目、やられたと思わせつつ4回目。…ガーヴ…、お前はターミネーターか?
そしてもう一つ、重要なこと。それは『黒幕側の種明かし』です。この回でようやく魔竜王一派がリナを狙っている理由を明かします。 それがこの回の冒頭です。
ゼロス「魔竜王ガーヴ、直々のお出ましとは…。今までどんなに挑発しても出てこなかったのに…。」 ガーヴ「お前の挑発ごときで俺がのこのこ出てくるわけにはいかなかったが、この神殿の中ならば話は別だからな。」 アクア「そうかい。クレア・バイブルの写本が取り巻くこの神殿の中ならヘルマスターの目は届かない。」 ゼロス「ああ…なるほど。……ボクとしたことが迂闊でしたよ。確かにここならば、ヘルマスター様の目も届かない。今のあなたにとってはヘルマスター様が一番厄介な存在ですからね。……魔竜王ガーヴ。」 リナ「ヘルマスター!?魔王シャブラニグドゥの5人の腹心の一人、あの冥王(ヘルマスター)フィブリゾ。……ガーヴにヘルマスター…、そんな大物が二人も?…なんであたしにっ!?ということは…ゼロスもっ!」 ガーヴ「”様”が抜けてるぜ?ゼロス。ガーヴ様だろ?」 ゼロス「それは失礼を…。」 リナ「どういうことよっ?ヘルマスターがガーヴとやりあってるって!?」 ガーヴ「へへへへへへっ。簡単なことさ。今の俺はシャブラニグドゥに反旗を翻した裏切り者だからよっ!……シャブラニグドゥのくそっタレが居ない今、一番厄介なのは……ヘルマスターの野郎だ。」 ゼロス「そういう理由なんです。」
これがアニメ版ガーヴの状況なのですが…さすが、好戦的と言われるだけあって言葉が汚い汚い。…アニメの言葉直したら、ガーヴの笑い声が「へへへへっ」になるのがどーしても笑えますね。 この時では怖さだけを出せばいいので、こんな感じですが、3回戦目の時にはちょっと憂い帯びた言い方になります。TRYでガーヴを見た方は、これ見たら笑うでしょうね。
ゼロス「それにしても千年ほどお目にかからないうちにイメージが大分お変わりになりましたね。魔竜王”さま”。」 ガーヴ「そーかい。昔はもうちょい礼儀正しかったか?」
この後からガーヴ、ゼロスをタコ殴り!ゼロスいぢめが始まります。…はっきり言ってゼロス、別に顔を腫れさせたり、赤アザや擦り傷作る必要なんてないと思うんですが、それはそれ。雰囲気ということで…。 一番ゼロスがかわいそうだと思うこと。それは原作ではあった「いいえ、千年前の方が気が短くありませんでした?」が言えなかったということ。…かわいそうに、台詞の途中で攻撃なんて、アメリアが許さない暴挙ですよね。 今まで攻撃らしい攻撃を受けなかったゼロスだけに、このシーンはインパクトがあります。一方リナは、やたら繰り返されたヘルマスターの文字にビビリまくりです。そりゃ腹心2人なら当然だと思いますが…。しかし、ゼロスの胸倉を掴んでいるガーヴに向かって打ちます。
ガーヴ・フレア
…原作にもそしてマンガにも登場するこのガーヴに向かってガーヴ・フレア。洒落なんでしょうか、挑発なんでしょうか。やっぱ冗談か…。もっともマンガではガーヴ本人なのか確認で打ってましたけど。 そして、無印・NEXT前半にて5腹心の力を借りる唯一出てくる黒魔法が、このガーヴ・フレアなんですよ。もしかして伏線なのでしょうか。そうだとしたらすごく年季の入った伏線ですねー。打っているのはリナとゼルです。
そして、題名にあるとおりゼロスの正体もここで出てきます。リナの前では消える・魔族と知り合いだなんて言う・セイグラムやカンズェルが驚くなどという、伏線を張ってきたゼロスですが、ここでとうとうネタ晴らし。 リナもフーンってなもんですから、拍子抜けですね。ツーといえばカーな会話をするリナやゼル。説明が必要なガウリイとマルチナ。この塩梅が成り立っているわけで、全員がいないとこんな会話になるわけです。
さて、ここからAパートにも関わらず戦闘が始まります。はっきり言って大好きな夜戦闘です。画面が映えるんですよ、特殊効果はやっぱり背景が暗いに限ります。また、アトラス編でもそうでしたが、原作を多少意識したこのNEXTでは魔法がめちゃくちゃ出るんで嬉しいです。 リナは合流したガウリイたちと共に、セイグラムと戦います。ブラスト・アッシュ(アメリア)、ダイナスト・ブラス(リナ)、ダイナスト・ブレス(ゼル)、増幅ドラグスレイブ(リナ)。もう、黒魔法オンリー、5腹心魔法もこの通り。ウハウハな大放出です。まあ、魔法をいかにうまく使うかがスレイヤーズの見所なんですが、画面として映えるならこっちの方でしょう。アニメでは画面が流れていくので、理屈で見るないんです。なので効果的に「なんかすごそう」を読者に植え付ける派手さが必要なんですね。 ところでセイグラム、人の姿も取れない魔族のクセに妙にパワーアップ。避けるでもなく上の術をいとも簡単に受け止めています。…3流のクセに…へんっ!(ギャグがなくて悔しいらしい
一方ゼロスですが、ガーヴの問いかけに言葉を濁しています。曰く 「ヘルマスターはリナを使って何をしようとしているか?」 というもの。これこそが、NEXT最大の伏線であるわけですが…種明かしは最後の最後までとっておきます。ゼロスお得意の「それは秘密です」で逃げるのですが、さすがに魔族二人では逃げられそうもない。そんな場面で出てくるのが……
マルチナでした。
もーここからはギャグてんこ盛り。実は水竜王の残留思念であるアクア婆ちゃんの効力なのですが、ゾアメルグスター大活躍で一気に落とします。なんだかシリアスが絶対に続かないと名高いハーメンルのバイオリン弾き(マンガ)みたいですね。必ず落とすのがアニメの笑いどころ。 最後にアクア婆ちゃんがネタ晴らしをしつつ、「カタート山脈へおいで。―真のクレア・バイブルの元へ」と言い残してガーヴを撒いてくれます。前回言った水竜王の審査はこれでOKというところですか。 ゼロスはここまで見越してこの神殿にリナを連れて来たのかはわかりませんが、最後の最後までリナを導こうとはしませんでした。ゼロスは秘密を守りリナはすべて踊らされているとはこの時点ではまだ、想像だにしていないのです。…それだけにヘルマスターの策士的なところとかが、浮き彫りになるのではないでしょうか。
さて、最後にマルチナについてちょっと言いたいのですが、かなりどうでもいいことなので、すっ飛ばして下さい。
無印後、原作も一通り読み始まったNEXT。私にとってはなんですが、この頃かなりアニメの知識が甘くて、『原作と違いすぎる』と不満に思っていました。…特にここらへんからのマルチナは、本当にウザくてしつこくて、…嫌でした。 が、原作から離れてやっとアニメが観れるようになった今なら、マルチナの存在意味も少しはわかります。…マルチナは本当に何も持ってないキャラだということに気づいたんです。 キャラクターというのは、出す意味があってこそのキャラであって、ストーリーに関係性があるからこそ、出すんですよね。…けどマルチナは、全くそれがないんですよ。(リナへの復讐も途中で消えかけ、動機付けが本当に薄いと思います。)渡部監督が「後半マルチナを出すのに苦労した」とコメントしている理由がわかります。 また、こういうアクションアニメなのにも関わらず、戦闘力がない。…そりゃ、シリアスシーンには使えないですよね。
ですが、アニメ化するに当たってリナ以外の女性キャラクターにはある共通点があるんです。―それは、成長すること。
戦闘慣れしてない世間知らずのアメリアが、徐々にたくましくなる無印。同じく虫も殺せぬようなお嬢様、シルフィールがコピーレゾに止めを刺すところ。神の側に立っている為、自分は正しいと考えきってしまい疑問を持つこともしなかったお高く止まっていたフィリアが、神の側を降り「正しさ」とは何かを求め続けるTRY。 どれも回を増すことに性格が変化していき、何かを得ています。これは、全員がある一定の力を持ち、その戦力や性格の元にストーリーを重ねる原作スレイヤーズと全く異なる点です。渡部監督はなぜかこの点に非常にこだわり、譲りませんでした。…実はゼルもそれに当たると思うんですが、無印の初期の脚本家、小山さんは非常に原作に忠実でしたので余り出なかった部分だと勝手に推測しています。
ではマルチナは何がどう変わっていったのか。これは「恋」ですね。 NEXTの裏のテーマでもあるガウリイとリナの恋の発展。激ニブのリナと全く対称なマルチナを使って、徐々に意識をさせるというのが一番出したかったマルチナのキャラクター性なんですよね。…私は全然気づきませんでした。本当にもう、「激ニブはてめーだ。」って感じですよね。 そんなマルチナの恋の遍歴はゼル、ガウリイ、ゼロス、フィブリゾ、ザングルスという無節操極まりない様子です。(よく見るとゼルを見て顔を赤らめてたり、「私の気持ちを弄んだフィブリゾを」とか言ってます。)ですが、最終的にザングルスと相思相愛になれた…ということが重要だと思います。それを案じさせることで、ガウリイとリナの関係をも発展させようとしていますから。(最後の「次はあんたの番よ」の台詞にて
マルチナの存在意義はそこにこそあると思うのですが、私は他にもマルチナが大きく変わったと思った台詞があります。 「私、なんにももできない!」 という最終話の台詞です。これを聞いて私は「この子はやっと自分を測れる子になったんだ」と思いました。まぁ、無印のアメリアと一緒です。戦闘していくに連れて変わっていくという点において。 それまでのマルチナは、よせばいいのに…と思うほど自分を知らなくて、無鉄砲に口を挟んでいました。いい例が今回なんですけどね。アトラス・セイルーンではマルチナ、戦闘に関わっていません。いなかったり、外にいたり。それが、このガーヴ・フィブリゾの時にはちゃんと付いて行ってるんです。だから、原作鵜呑みにしていたリアル・タイムではここらへんのマルチナが、一番いらないと思ってたんですよね。 でも、ここでの出来事を彼女がどれだけ理解しているかは別として、世界の広がるような体験をして自分というものを知った―と私はそう解釈しています。子供の時は、自分に無意味な自信があったりしますけど、どんどん世間を知って自分を知るようになりますよね。マルチナも同じなんじゃないかと思います。
無節操に人を好きになったり、自分を冷静に認識するようになる。―これって思春期の女の子らしいことじゃありませんか。マルチナにあえて何も持たせなかったのは、スレイヤーズNEXTのおそらく対象年齢である、小学校高学年から高校生あたりの女の子を表現したからだと思います。 そう考えるとこの子が好きになってきました。同調できる子(まあ、同調するには年齢が行き過ぎましたが…)として認識できるようになったからだと思います。
それらのマルチナの解釈が正しいとは思ってませんが、まぁ私はこう思っていますよ程度に紹介させていただきました。 ですが、マルチナが明らかに後半にもたらしている効果がもう一つあるんです。それは『引き立て役』。絶対これは、アニメらしい効果だと思いますが、本当にマルチナは他のキャラを立ててくれます。ツーといえばカーなリナたちに変わり、大げさに驚いてみたり、アホなこと口走ったり、文句タラタラだったり。 ごめん、マルチナ。お前が出てくるたびにリナやアメリアやシルフィールがまともに見えてしまうよ。と思わせてくれます。 マルチナが「ギャー」「キャー」とか叫ぶたびに、「ああ、普通だったらここで叫ぶのね」と読者に思わせてくれる物差しキャラクター。それがマルチナ。ガウリイに取って代わったこのポジションは中々おいしいです。 余談ですが、この後のクレア・バイブルの中にマルチナが入るところって、そう考えてみるとすごく美味しい。もう駄目押しで「リナにしかクレアバイブルは見せられない」という効果を与えてくれます。パワーアップ儀式であるクレアバイブルを高める存在として一躍買ってるんですね。…人気が出ないのを承知でこの行為をさせたアニメって…すごいですね。…かわいそうだけど、おいしいよ…マルチナ。
というわけで、今回は終わり。次の舞台はドラゴンズ・ピーク。リアル・タイム時に私が惚れたミルガズィアさんが出てきます。そんな今考えれば爆笑なことも思い出しつつ、次回へ続きますっ。 |
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